キャノンボール六甲体験記③カオスな一期一会

1人でトレラン体験記
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市ケ原 オモロい人大集合!

鍋蓋山を下って次に目指す地は市ケ原だ。市ケ原は山間の谷間にある河原で、生田川の中流域に当たる場所だそうだ。以前六甲山の初心者向けトレラン大会に参加したときに通過し、ここで道を間違えて引き返した思い出の地だ。

途中お味噌汁を提供してくれるエイドがあり、温かさと塩気が体に染み入った!暑い中走るときは塩分補給も忘れてはならない。

味噌汁エイド キャノンボールラン
日本人の体とDNAにはやっぱり味噌汁!ジェル飲料が苦手なわたしにはありがたかったです

市ケ原を過ぎたら、六甲全山縦走路後半に入ります。そして今回の山場、摩耶山の登りが始まります。登りと下りを繰り返して山頂に向かうので、少し足にくるかもしれません」と鉄平さん。そうだ、キャノンボールの山場は六甲山系で最も登りがハードとも言われる摩耶山。ついにここまでやってきた。

工程の半分まできたか!いや、まだ半分てことは残り20キロ以上あるのね。残り何キロとカウントし出すとしんどくなりそうなので気にしないようにしてきたが、5山も越えて階段も登りまくり、景色も堪能しまくった上でまだ残り20キロもあるという現実に向き合い、ちょっと気が遠くなった。

そんなとき、市ケ原を越えた辺りで前方に不思議な光景が目に入る。頭の上に何か異物が乗っている人がいる。乗っているというか刺さっている。服も着物?小走りで近づいてみると、頭に釜がぶっささり、血を流しているではないか。

落ち武者さん キャノンボールラン
蛇を手に笑顔でパチリ!

「あの…一緒に写真撮っていただけますか?」。とっさに言葉が出た。落ち武者に扮したこちらの男性、この扮装でずっと走っているとのこと。そもそも走りづらいだろうし釜が木に突っ込んだら大変だろう。

「よければこれをどうぞ」と小道具の蛇のおもちゃを私に差し出し、記念撮影に応じてくれた。この余裕…。走力、メンタルともに強靭な証だ。仮装もせずにコガモに甘んじてひたすら走っている私はまだまだ!トレランてすごい世界だ。

落ち武者さんとの出会いで気合を入れなおし、まだ見えぬゴール宝塚を見据えた。私もあのくらいの気概を持って山を楽しめるようになりたいものだ。するとまた不思議なフォルムの男性が目に飛び込んできた。今度は頭に傘が刺さっている。そして網タイツを履いている。そして2人もいる!

ちょうど近くに自動販売機とトイレがあって休憩タイムになったので、急いで水を買ってまた記念撮影をお願いする。快く応じてくれたお2人はご兄弟とのこと。本当の兄弟なのか、叶姉妹のような兄弟設定のコンビなのかは謎なままだ。

レインボー兄弟 キャノンボールラン
まずはお兄様と一枚
レインボー兄弟2 キャノンボールラン
弟さんも一緒に撮ってくれました!網タイツに膝あてのコーデがすてきです!

この2組との出会いのおかげで、朝から微妙に続いていた緊張がほぐれた。そうだ、今日は祭り!楽しんだ者こそ真の勝利者であるとのメッセージ、しかと受け取りましたぞ。

カオスな掬星台で子どもたちの未来を思う

「市ケ原を越えて摩耶山を越え、掬星台まで辿り着いたらキャノンボールはクリアしたようなものです」という鉄平師匠のお言葉からも力を得て進んで行く。よしぞうのこれまでのトレラン最長距離は20キロとちょっと。そのため20キロを過ぎたここからは未体験ゾーンへ突入していく。はじめての挑戦を前にして何かがみなぎってくるような気がする。今のところ体に痛みはないしまだまだ走れそうではないか。

それに摩耶山は登山経験がある。ちょうど1年ほど前、トレランを始める直前に友人と二人で登ったのだ。登山初心者2人きりでの山登り。前日は遭難したらどうしようとドキドキして寝付けなかったな。新神戸駅を出発し摩耶山山頂、掬星台を経由、下山後は三宮まで歩いた。当時の記録を見ると、総距離8.2キロ活動時間4時間36分となっていた。達成感と喜びに満たされ友人と健闘を称えあい、下山後のビールが美味しかった。あれから1年後、摩耶山は通過点の1つとなり5倍以上の距離を走ろうとしている。

摩耶山の登りが始まった。山頂近くの掬星台(きくせいだい)にあるエイドを目指す。

掬星台(きくせいだい)

摩耶山山頂の近くにある展望広場。 函館市の函館山、長崎市の稲佐山と並ぶ、日本三大夜景スポット。広範囲に渡る景観は「1000万ドルの夜景」とも評されている。手で星を掬う(すくう)というのがその名の由来。ロマンチック!ナイトスピードに参加する人はさぞかし美しい夜景を楽しめるのだろう。

摩耶山の登りは変化に富んでいる。登って下りてと何度か繰り返すが、単調ではないので飽きない。えいやっと手で岩を掴んで登る箇所もあり、アドベンチャー感も味わえる。前回登山したときも、思ったより早いペースで登れたような記憶があるから今回も大丈夫!ここを越えたら山場は終わりらしい。そう思うと足取りが軽くなってくる。

まだ6歳くらいだろうか、飛ぶように元気に坂を下っていく男の子がいる。キャノンボールのゼッケンをつけているではないか。声を掛けてみると、お父さんと一緒にキャノンに参加しているそうだ。若さでアタック、挑戦心に元気と勇気を頂きました!サイコーの体験をしているね。

水分補給休憩をしていたら、近くに座っていたおじいさんが「どこまで行くん?」と話しかけてくれる。「宝塚までです」「おお、頑張るね!おれも若いときは六甲縦走何十回もしたもんや。余裕やった」と若かりし頃の武勇伝を聞かせてくれる。

おじいさん 梅干し
ご自身のために用意された梅を分けてくださる温かい心遣いに感謝です

「今日は暑いから塩分しっかり摂り。梅干し全員食べや」と言って持参していた梅干しを分けてくれた。「梅干しの種からも塩出てくるから10分は舐めとき」とのこと。一同「ありがとうございます!」とありがたく頂戴して出発。塩分高めの梅干しとおじいさんのお心遣いのお陰で、さらに足取りは軽くなり、歩を進めていく。

掬星台につくと、大規模なエイドに人だかりが出来ている。からあげ、豚汁、フライドポテト、コカ・コーラ、ビール、日本酒。美味しそうに食べて飲んで笑いあうキャノンボーラーたち。まさしく祭りだ。エイドで豚汁をよそってくれるお兄さんはツタンカーメン風の仮装をしている。近くでは別団体がハロウィンパーティーの出し物の練習だろうか、魔女風仮装に杖を持った人々が陽気な音楽に合わせて踊っている。もはやなんの集まりなのか不明、カオスな掬星台。

掬星台エイド キャノンボールラン
走る人もサポートする人も祭りを楽しむ気概に溢れています

町内の祭りでは神輿をかついだり盆踊りを一緒に踊ることで体験を共有し、一体感を得て人と人の距離が近くなる。キャノンボールでは長く険しい道のりを走るという体験を共有することで一体感が生まれる。人と距離を置くことが推奨されたここ数年だが、こうした繋がりの中で生まれる触れ合いや楽しみが人生には必要だ。子どもたちには、バーチャルな体験よりも人や自然と向き合い感性を育む「センス・オブ・ワンダー」な体験をたくさんしてもらいたいな。

センス・オブ・ワンダー

アメリカの水産生物学者レイチェル・カーソンの著書。自然の神秘や美しさに触れ合うことで育まれる「不思議がる心」「探求心」の大切さを情感あふれる筆致で描いた名著。よしぞうにとっては雄大な自然とオモロな人々に出会えるトレランがセンス・オブ・ワンダーの入口だ

一期一会。出会いとご縁の中で、感動や喜びを共有できる瞬間を重ねたい。

「ここでは長めに休憩します。補給をしてトイレを済ませて15分後に集合しましょう」と鉄平師匠。ここまでエイドに立ち寄っても2,3分立ち止まる程度だったので、初めての長い休憩だ。空いているベンチに腰を下ろして豚汁と持参したベースブレッドをもしゃもしゃいただく。

エネルギーは間違いなく消耗しているし、空腹感もあるが食べ始めるとあまりお腹に入らない。紙コップ1杯分の豚汁でちょうどいいくらいだ。無理して食べるとお腹が痛くなりそうなので、一気に食べず少しずつ補給していこう。長距離では補給のペースが大事だとウルトラランナーのどなたかが言っていたな。

味噌汁とコーラ キャノンボールラン
味噌汁とコーラ。普段飲まないコーラがとてもおいしかったです

落ち武者さんも補給中だ。目が合うと穏やかな表情で頷いてくれる。視線だけで互いの健闘を称えあう。ここまで、手元の時計で22キロ。やっと折り返し地点。

完結編、「キャノンボール六甲体験記④人はいつからでも変われる」に続く…。

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