トレイルラニング 初心者体験記第3話~ナンは出せなかった・前編~

大岩登り 1人でトレラン体験記
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前回までのあらすじ

ラン歴ゼロ、トレランの知識ゼロでやる気だけを胸に飛び込んだトレランイベント。周りはベテランだらけ、持ち物も服装も1人様子が違うよしぞう。ステンレス水筒2本、冬山用ごつめアウターを詰め込みパンパンになったザックを背負い、ついに走り出す!

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ザックは軽く、そしてきつくが鉄則です

「ここから平地は軽く走ります。しばらく行くと岩登りも楽しめますので、お楽しみに!一本道なので迷うことは無いでしょう。では進みましょう」。アランコーチに続き、走り出す参加者たち。私は最前列に陣取った登りとは変わり、最後尾へ下がって走り出した。なにしろラン経験はほとんど無い。なんとか後ろを付いて行くのがやっとだろう。

やはり私以外の参加者の足取りは軽い。そんなにスピードを出して走っているようには見えないが、あっという間に前を走る人との間隔があいてしまう。

(みんな小股で走ってるし、軽くジョギングしているように見えるけど、なんでこんなに速いのだろう…)

ランニング 山
だんだん背中が遠くなる…

私の前を走っていた、ボブヘアーとティファニーブルーのウェアが素敵な女性・ティファニーさん(推定年齢40代後半)が、チラチラ振り返りながらこちらの様子を伺っている。目が合うとニコッと笑顔になり立ち止まってくれた。まだ走り出したばかりなのに、1人取り残されはじめた私を気遣ってくれているようだ。

「あ、気になさらないで先に行ってくださいね!私遅いので…一本道と言ってましたし、大丈夫です!」

「無理しないでマイペースで走ってきてね。少し離れても、先で待っているから!」そう言って、足取り軽やかに駆けていくティファニーさん。や、優しい。

ティファニーさんの後ろ姿が遠のいていくと、1人になった。今日はハイカーも少ないようで、人の気配が無い。付いて行くことに必死であたりを見る余裕が無かったが、1人になって逆に緊張が解けたのか、山の景色が目に映りだした。葉を落とした低木とササが登山道沿いに静かに連なっている。太陽は厚い灰色の雲の間から、なんとか光を地上に届けようとしているようだ。走るたびに茶枯れた落ち葉がカサコソ鳴る。

トレイル ササの道
山では1人になることも多い

深呼吸すると冷たい空気が鼻孔を満たし、背筋が伸びる。1人だけれど、不安も焦りも無く不思議な心地よさに包まれて立ち止まった。ティファニーさんもほかの皆も、もうまったく見えない。開き直って自分のペースで楽しもう、でも距離が開きすぎると迷惑をかけるから、できる限り速く!そう思い直し走り出して5分も経っていないだろうか、道幅が広くなり視界が開けた場所で、皆が待ってくれている。

こちらを向いて両手を振ってくれている人、笑顔で拍手をしてくれる人、クールに水分補給している人。

ゼーハー言いながら「お待たせしてごめんなさい!」と合流すると、「そんなに待っていませんよ、思ったより速かったですね」とにこやかに励ましてくれるアランコーチ。「よしぞうさん、ザックのウエストベルトが外れています。それだと走りずらいので、しっかり固定しておきましょう」

ザックのベルトはきつめに!

トレランザックのベルトは、走った時ザックが揺れて上下しない程度にしっかり、きつめに締める。初心者だとベルトの締め具合が緩めになり、走りづらさに繋がるので要チェック。トレランザックを購入するときは、ベルトの位置が自分にフィットするものを選びたい。ベルトの位置を上下に移動できるものや、女性用に胸にベルトが干渉しないモデルなどもある

必死すぎて気づいていなかったが、ザックを固定するベルトのバックルが外れていた。

「よしぞうちゃんが走るとザックがボンボン揺れてる!なんか音もすごいんだけど~(笑)」とキャットちゃん。確かに、荷物でパンパンのザックを背負って走ると、背中で激しく上下に揺れる。しかもベルトが外れていたので、私が走るたびにドシュッ!ボフッ!という効果音がついてくる。

やや心配そうに、荷物半分もってあげようか?という2度目の申し出をしてくれる優しいキャットちゃん。じゃあお願いしますとは言えずに、「重いほうがダイエットになるので!」というストイックな返事をしてしまった。

岩場くぐりで愛のザックリレー

ザックのベルトを締め直して、最後尾を遅れながらなんとか付いて行くと、道の様子が変わってきた。「ここからはしばらく岩場が続くので歩きましょう。岩登りや狭い岩の穴をくぐる箇所もあります。クライミング気分を楽しめますよ」とアランコーチ。そうだ、イベント詳細には岩場で岩登りありと書いてあった。

大岩 岩登り
なんて立派な岩場!
岩場、ガレ場・ザレ場

岩場は、腰かけられるような大きな岩が連なり、岩を登って歩く場所。ザレ場は拳より大きな石が連なっている場所で、足元をとられやすい。ザレ場は小石が連なっている場所。平坦と下りは走るのが基本のトレランでも、このような場所では無理して走らず歩こう

岩登りは好きだ。大きな岩を目にすると、アドレナリン的なホルモンが出てくるのか、ワクワクする。走らずに岩をつかまりながら歩いていけるから、バクバクしていた心拍数も収まってきた。巨石登りと言っていいくらいの大岩もたくさんある。トレランは登山とトレッキングのハイブリットスポーツとも言われているようだが、コース選び次第で登山やクライミング的な要素も存分に楽しめる。そういえば今回のコースは登山要素が強く、登山好きな方におススメとイベント告知に書いてあった。

六甲山は岩の山

六甲山は「岩のテーマパーク」「岩登りの聖地」とも呼ばれるような、岩場が多い山。昔から岩登りの訓練地として、本格的な登山者が集まってきていた。登山ルートが多く、初心者向けで歩きやすい道も整備されているので、多彩な楽しみ方ができる

目の前に見上げるような大岩が出てきた。「ここを登ったら、1人がやっと通れるくらいの小さな穴を通り抜けます。一人づずゆっくり進んでください」。おお、アドベンチャー! 

前の人から順番に大岩を登り、穴をくぐりぬけていく。「ここをくぐれなかったら戻るしかありませんよ、頑張ってくださいね」と微笑を浮かべるアランコーチ。

アランコーチは推定身長185センチ、体脂肪率10%前後の細マッチョモデル体型。こんな岩場も楽々だろう。ここから一人で戻るのは勘弁だわ…。気合を入れて登ろう。一人心の中で呟いて気持ちの整理をしていると、私の番がきた。足を掛ける場所を確認しながら、慎重に大岩を登る。手袋をしてきてよかった!素手だとごつごつした岩場で指を痛めそうだ。

岩登り 大岩
岩登り上からのアングル。アドレナリン大放出

大岩を登りきると、次は岩くぐり。這いつくばる姿勢でなんとかくぐれるような小さな穴だ。太っていたらお腹が突っかかりそう…と思って体勢を低くすると、背中のパンパンザックが穴の上部にひっかかりそうではないか!!これはまずい…。するとすかさず、後ろから声があがる。「前の人、よしぞうちゃんのザック持ってあげて!これじゃ通れないわ!」。後ろに控えていたキャットちゃんだ。「もう~ほんと笑かしてくれる!」とお腹を抱えて笑っている。

前にいたダン氏がさっと手を伸ばしてくれる。「ありがとうございます!」と慌ててザックを降ろし、ダン氏に手渡す。穴を通り抜けた先の不安定な岩場に立っていたダン氏は、その先にいたあやめさんにザックを手渡し、あやめさんはさらに先の安定した大岩に立っていたティファニーさんにザックを手渡す。「これは重いね。よしぞうさん頑張ってるなぁ」と感慨深げなダン氏。

愛のザックリレーだ。パンパンのザックが手から手へ、岩場を越えて安全地帯へ運ばれていく。そんな愛と共に、ほふく前進で無事穴をくぐり抜ける。ザックが置かれた場所まで登っていくと、「おつかれ!」「初めてなのに順調やん!」と口々に声をかけられた。

みんな、優しい。ど素人の初心者を全員でサポートしてくれる。1人だったらザックが突っかかってパニック状態だっただろう…。

回トレイルランニング 初心者体験記第4話~ナンは出せなかった・後編~ へ続く!

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